どうも、相変わらず元気じゃないです。
エストニアをロシアから守るはずの国防軍の中に、ロシアとの密通者がいた。
最近、エストニア軍に結構大きなスキャンダルがありました。エストニア国防軍のエリート士官Deniss Metsavasがロシア軍の情報局にエストニアの機密情報を渡し続けていたことが発覚したのです。
Metsavasは、彼の父親とともに、過去5年間にわたって、ロシアの軍情報部GRUにエストニアの軍情報およびNATOの情報を渡し、見返りに報酬を貰っていたようです。
まあ、それだけっちゃそれだけなんですけどね。。。
でも、この事件がおもしろい(興味深い?)のは、これがエストニアの民族問題を揺るがしかねない事件だからなんです。
エストニアの英語メディアEstonian Worldは、この一件が「エストニア国内におけるロシア系エストニア人全体の信頼に関わる問題だ」と報じています。
「ロシア系エストニア人は、エストニアとロシアが戦うとき、本当にエストニア側につくのか」問題
このニュースがエストニアの民族問題に直接関係する理由は、この軍士官が、ロシア系エストニア人だったから。もちろんその父親も。
エストニアに来るとわかるけど、首都タリンではロシア語がそこらじゅうで飛び交っている。
「ハラショー!」ってめっちゃ聞くから、私はこれがエストニア語なのかと思って、エストニア人のルームメイトに、「ハラショー!」って言ったら、「それロシア語だよ」って嫌な顔されたりした。
サンクトペテルブルグからロシア人観光客が大量に来ているっていうのもあるんですが、ロシア系エストニア人の存在も大きい。
エストニアでは国民の4分の1がロシア系エストニア人。Narvaというロシア国境の町では約90%がロシア系エストニア人だという。
中には、エストニアで生まれているにもかかわらず、ロシア語しか話さない人もいる。(ロシア語学校とかがあるらしい)
そうした中で問題にあげられるのが、ロシア系エストニア人のintegration(エストニア社会への溶け込み具合)。
Estonian Worldによると、今回逮捕されたDeniss Metsavasは、「ロシア系エストニア人がエストニア社会に溶け込んだ成功例」とも見なされていたらしい。
実際、彼はテレビ番組にも出ていて、他のゲストが「エストニア国防軍でロシア系エストニア人が働いているけど、信用していいのだろうか? いざロシアがエストニアを攻めてきたときに、ロシア側につくのではないか」と言ったときに、強く反対していたという。
「エストニアへの忠誠を誓うロシア系エストニア人もいる」として、彼は自分を例に挙げていた。
ロシア系エストニア人はどうなるのか?
この軍士官の逮捕が、民族問題につながるのもわかりやすいはず。
Estonian Wolrdによると、そもそも既にロシアのクリミア統合以来、エストニア内においてロシア系エストニア人への反感が強まっていたらしい。そしてこの一件はさらにその反感を高めることになるだろうと書いている。
しかし、エストニア系エストニア人がロシア系の人を嫌ってしまうのもわかるというか。。。
だって、自分の国を占領していた国の人がそのまま残って、しかもその言語を喋り続けていたら、「は?」ってなりそう。
例えば、日本が韓国を占領した後に、そのまま日本人が韓国に残って、しかも、国民の4分の1を占めるくらいの多さで残ってたら、どうよ?
ただ、ロシア系エストニア人の人たちだって別に悪いわけじゃないんだよなあ。ロシア語もエストニア語もどっちも話す人もいるし、確かにロシア系エストニア人のコミュニティだけで生きていくんだったらエストニア語も要らないもんな。。。
わたしの近くにもロシア系エストニア人のひといるけど、別に見た目じゃわかんないしね。
アメリカやオーストラリアの人種問題にずっと興味あって大学時代はそれらを調べてきたけど、エストニアみたいに“見えない”民族問題ってあるんだなと。
肌の色は一緒だし、目の色も一緒。外の人から見ただけじゃ、よくわからない。けど、少し暮らしていると気付かずにはいられない…みたいな。
「ロシア系エストニア人はどうなるのか?」って書いたけど、そりゃどうなるのか私にはわからない。
ただ、割とぎりぎりのバランスでエストニア社会は保たれているんじゃないだろうかと思う。
こういう事件があると、その危ういバランスがますます見えてくる。
にしても、どんな国にも民族問題ってあるね。。。人間、ややこしいわ。